今日の1冊『宗教世界地図 最新版』(立山良司著 新潮社刊)

 ずいぶん前に買って時々読んでおりましたが、最近は常にカバンの中に入れ、読んでいる1冊です。 世界中で起きている紛争やテロ行為は、宗教的な要素が絡んでいることが多く、解決を難しくさせているのです。 特にイラクで起きているテロは、シーア派スンニー派による宗教対立が主な要因であり、そこにアメリカが介入しているため、シーア派内部でも対立の構図があり、より問題を複雑にしているのです。 ご存知の通り、イラクの総人口の内、半数以上がシーア派ですが、首都バグダッドを支配していたのがスンニー派ということで、旧フセイン政権下までシーア派は差別を受けてきました。 一例として油田はシーア派が住む南部に集中しているのにも関わらず、その利権はスンニー派が握り、シーア派は恩恵を受けなかったのです。そのため、湾岸戦争直後からシーア派住民はフセイン政権に対し反乱を起こしておりましたが、アメリカは支援の手を差し伸べず、見殺しにしたという過去があるのです。 それがシーア派内部にアメリカへの不信感を持つ人たちが多い理由なので、シーア派内部も親米派と反米派で分かれているという訳です。 このイラクだけに限らず、かつての北アイルランド紛争も宗派対立がその要因でしたし、歴史を紐解けば、宗教対立が戦争にまで発展した例は数多くあるのです。 日本人の多くが持つ宗教観では考えられないと思いますけど、それだけ人々の生活に宗教は欠かせませんし、依存度が高いのです。しかし、テロリスト側が宗教を都合良く解釈し、テロリズムを正当化していることが大きな問題なのです。 オサマ・ビン・ラディン然り、アフマド・ヤシン然り、過激派の指導者と呼ばれる人々の罪は重く、多くの罪無き人々を殺し、更に配下の若者たちにその殺しをさせた上、命を奪っているのです。 私たちは世界の宗教を正しく理解した上で、紛争やテロの問題を考えなくてはいけないのですが、この本では分かりやすく解説してありますので、お薦めです。